「理解社会学の現象学的基礎づけ」を企てたアルフレート・シュッツの『社会的世界の有意味的構築』は、その企ての理論的基盤としてフッサール現象学の初期時間論と静態的現象学、および後期発生的現象学の知見とを独特の仕方で利用していた。近年のシュッツ研究においては、シュッツの初期草稿群におけるベルグソン的時間論の受容に焦点を当てて彼の思索の独自性を探る動向が見受けられる。しかしその際、肝心のフッサール現象学における諸理論との異同について十分な比較検討がなされてはいない。本研究発表では、フッサールのテクストに基づいて、シュッツによる誤読や固有の解釈傾向を明らかにしつつ、現象学的社会学への現象学の理論的寄与について再検討することとしたい。