「『危機』と『呪縛』:「自然の数学化」を巡る大森荘蔵によるフッサール批判」
横山達郎(慶應義塾大学) 近年、『ヨーロッパ諸学の危機と超越論的現象学』(以下、『危機』)以降、フッサール現象学において提出された「生活世界」という概念が、狭義のフッサール研究あるいは現象学研究の枠組を超えて(例えば、英米圏の分析哲学の伝統における、「心身問題」へのアプローチへの批判といった文脈において)、大きな注目を集めている。 『危機』におけるフッサールによれば、ガリレイ・デカルトに始まるいわゆる「科学革命」の過程において、自然が「数学化」されたこと、そしてこの「数学化された自然」が我々の「生活世界」から、ある意味において遊離し、一人歩きを始めたことが、「学問の危機」の温床としてあるとされる。 『危機』におけるフッサールは、この「自然の数学化」を科学革命の「源泉」「原因」としてみなしていると考えられるが、この点について、疑義を提出したのが『知の構築とその呪縛』(以下『呪縛』)における大森荘蔵である。 大森は『呪縛』内で、『危機』のフッサールは、「原因」と「結果」を取り違えていると論じる。すなわち、大森によれば、科学革命の真の源泉は、我々の「感覚的性質を「物」から排除して人間の「意識」あるいは「精神」に押し込めたこと」 *1にあるとし、「自然の数学化」は、そこからのむしろ「結果」であると強調する。 更に、大森は、フッサールが「数学化」ということで表している内実が、「具体的で経験的な現実世界から出発するが、それとひどくかけ離れた抽象的世界」 *2の構築であるとし、現実の諸科学は、フッサールが言う意味での、抽象化も数学化もされていないと批判する(「フッセルは自分で幽霊を作り上げてそれとたたかっているように見える」 *3)。 本発表では、この大森『呪縛』による『危機』批判の妥当性を吟味し、「自然の数学化」のより十全な理解を提出することを目標とする。 *1 大森荘蔵 (1998)『大森荘蔵著作集 第七巻 知の構築とその呪縛』、岩波書店、p.107。 *2大森 (1998) p.109。 *3大森 (1998) p.109。
by husserl_studies
| 2014-01-10 19:38
| 研究発表要旨
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