「西田幾多郎による志向性理論批判」
満原健(京都大学) これまで数多くの哲学者がフッサールの哲学に対して批判を行ってきた。西田幾多郎もまた、1911年に「認識論に於ける純論理派の主張に就て」という論文でフッサールの哲学を日本に紹介して以降、これを評価するとともに複数の論点について批判をしている。たとえば、1927年に発表された「知るもの」という論文で西田は以下のように述べている。「意識現象は志向的とか意味を荷うとか考えられるのであるが、私は単に志向的作用と考えることによって尚意識の本質を明にすることはできないと考える」(『西田幾多郎全集』第三巻、岩波書店、2003年、539ページ)。ここでは明らかに、意識の特徴は志向性にあるというブレンターノが再発見しフッサールらに受け継がれた主張への批判が表明されている。西田は前年の1926年に「場所」という題の論文を発表し、「場所」という概念でもって独自の哲学を築こうと試みはじめていた。この時期の西田は、意識は志向性という特徴に基づいて捉えるべきではなく、むしろ一種の「場所」として理解すべきだと主張しているのである。 本発表では、西田のこの主張を検討する。すなわち、志向性の理論のどこに欠陥があると西田が考えているのか、なぜ意識を志向性をもったものではなく「場所」として捉えるべきと主張されているのかを論じることによって、西田とフッサールの哲学との分岐点を明らかにする。 ただし、西田が参照したフッサールの著作はほとんど『論理学研究』と『イデーンⅠ』に限られているため、西田の批判はフッサール批判としては偏ったものとなってしまっている。たとえば『第一哲学』の第二部では、自我が反省する自我と反省される自我とに明確に区別された上で議論が展開されているのだが、西田はそれを知らず、現象学の自我概念が主観としての主観ではなく客観化・対象化された主観にすぎない、と批判をしている。そのため本発表では、西田のフッサール理解の一面性や過ちを指摘しつつ、それでもなおフッサールに対して有効と考えられる批判点を見出す、という作業を行う。それを通して、西田自身が想定していなかった、そしてまた今まで指摘されてこなかった両者の思想の共通点もまた明らかにできると考えている。
by husserl_studies
| 2014-01-10 19:36
| 研究発表要旨
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フッサール研究会
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