第11回フッサール研究会シンポジウム「志向性の哲学と現象学」 開催趣旨
提題者:中畑正志氏(京都大学)、村田純一氏(立正大学) 特定質問者:佐藤駿氏(東北大学)、富山豊氏(日本学術振興会・北海道大学) 司会:浜渦辰二氏(大阪大学) フッサールは、『イデーンI』において、志向性を「現象学全体を包括する問題の名称」と見なしている。志向性はフッサール現象学の根本概念であり、そのプログラムによれば、あらゆる哲学的問題は志向性としての意識体験を分析することで解決される。しかし、ハイデガー、メルロ=ポンティ、レヴィナス、アンリなどのフッサール以後の現象学は、志向性に何らかの欠陥(主知主義、心身二元論の残滓、身体や情感の軽視など)を見いだし、ときには志向性の現象学を批判的に解体することで、それぞれ独自の立場を築きあげている。志向性が、哲学的課題を担いうる概念(現象学の根本概念)であるかどうかは、あらためて問い直されるべきであろう。 志向性をめぐる議論は、現象学に特有のものではない。歴史的観点からも、この概念の豊かな鉱脈をたどることができる。アリストテレスは、感覚について「質料なき形相の受容」という見解を示していた。中世哲学においては、アリストテレスの「ノエーマ」というギリシア語の(アラビア語を経由した)翻訳として、intentioという語が用いられていた。デカルトは、「観念」を単なる思惟(=意識の様態)のみならず、それが表象するもの(現代風に言えば「内容」)の観点から考察している(観念のいわゆる「表象的実在性」)。ブレンターノはこうした背景を引き継ぎながら、「物的現象」から区別される「心的現象」のメルクマールとして「志向性」をとり上げることで、現代の哲学に通じる定式化をおこなった。志向性の概念は、現象学のみならず「心の哲学」においても重要な主題となっている。しかし、このような歴史のなかでも、ブレンターノを継承したフッサールほど、意識の根本特徴としての志向性に対して大きな可能性を見いだした者はいないように思われる。 志向性は、いかなる意味において哲学の課題でありうるのだろうか。そもそもそれは、現象学的哲学の根本概念でありうるのだろうか。『イデーンI』の公刊から100年を迎えるのをきっかけに、あらためて志向性の可能性や限界を考察することは、フッサール研究に携わる者にとって重要な課題となる。この課題に向き合うためには、フッサール研究にとらわれない視座にたって、志向性の思想史的背景や哲学的論点を考慮する必要もあるだろう。そこで本シンポジウムは、フッサール現象学の内外から、志向性に関連する研究に取り組んでいる方を招き、活発な議論の場を形成することを目指す。
by husserl_studies
| 2013-01-20 23:36
| 研究発表要旨
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フッサール研究会
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