本発表の内容は「現象学と解釈学との関係」に関する考察である。現象学は後期のフッサールにおいてすでにかなりの程度まで解釈学的であることを主張する。このことは、ディルタイからの影響をこれまで考えられていたよりもはるかに大きいものと見なしたときにとられる見方である。ディルタイの哲学は、自然科学的な探究によっては明らかにされない人間の「生(Leben)」の考察を課題としている。ディルタイによれば、ヨーロッパでは18世紀以降、自然科学とは異なる仕方で人間の生を探究しようとする動きが生まれ、そのことによって歴史考察が促されたという。このことを論じる中でディルタイは「地平」「目的論」「世界」といった言葉を用いている。これらの言葉は後期のフッサールが頻繁に用いたものでもあり、フッサールがこれらの言葉を用いるようになったのはディルタイからの影響によるものだと見ることも十分に可能である。『危機』の中でフッサールは、自然科学によって自然が理念化されて本来の経験が覆い隠されてしまったことを批判し、「生世界(Lebenswelt)」に還帰すべきことを主張している。また『幾何学の起源』の中では、テクスト理解に関する考察を展開している。これらのことは、ディルタイからの影響を受けてフッサールが解釈学的な考え方をとったことによると解釈することもできる。このように、解釈学な考えと重なるものと解釈することによって、後期のフッサールの考えにあらためて光を当てることを本発表は意図する。なおその際、「現象学と解釈学との関わり」に関するリクールの解釈に言及する。ただそれを援用するのではなく、不十分なものとして批判する。本発表は、リクールの解釈を反面教師にする形で「現象学と解釈学との関わり」について考えようとするものでもある。
by husserl_studies
| 2013-01-20 23:34
| 研究発表要旨
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フッサール研究会
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husserlkenkyukai@gmail.com 〒564-8680 大阪府吹田市山手町3-3-35 関西大学文学部 三村尚彦研究室内 フッサール研究会事務局 企画実行委員一覧 雑誌『フッサール研究』 ISSN 2432-0552 創刊号(2003.3) 第2号(2004.3) 第3号(2005.3) 第4号(2006.3) 第5号(第4号の再編集版含む)(2007.3) 第6号(2008.3) 第7号(2009.3) 第8号(2010.3) 第9号(2011.3) 第10号(2013.3) 第11号(2014.3) 第12号(2015.4) 第13号(2016.3) 第14号(2016.3) フッサール研究会旧ページ フッサール・データベース 日本現象学会 The Open Commons of Phenomenology カテゴリ
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