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金正旭「判断・真理・存在 ――リッカート‐ラスク論争を再考する―― 」
「バーデン学派」ないし「西南ドイツ学派」は、「価値Wert」概念を中心に据えた哲学を展開したことで知られている。とはいえこの学派はけっして一枚岩ではなく、リッカートとその弟子ラスクとのあいだに交わされた論争に目を向けるならば、むしろ彼らを一括りにするのは不当なのではないかとさえ思われるほどである。つまり、真理や認識といったトピックにおいてリッカートが従来の実在論的見方を捨てて「当為」や「実践性」を強調するに至ったのに対し、ラスクは逆にリッカートを批判しつつ実在論的見方へと回帰していくのである。

本発表の目標は、『認識の対象』第二版(1904年)ならびに「認識論の二途」(1909年)におけるリッカートの立場と、それに対するラスクの批判を取りあげ、両者がどのような仕方で対立していたのかを明らかにすることである。大まかに言えば、本発表は次の二点を示すことになるだろう。第一に、リッカートの実在論的見方に対する批判は、判断と直観についての彼の理解にもとづいている。すなわち彼は、判断は「である」を構成要素として含んでいるのに対し直観はそうではないがゆえに「当為」が要請される、と考えるのである。第二に、ラスクは「である」のようなカント的な意味での「カテゴリー」が直観「に対して」ではなく直観「において」働いていると主張する。彼によれば、リッカート的「当為」は直観において与えられる対象から派生するにすぎないのである。

リッカート‐ラスク論争に対する最終的な評価を下すことは、本発表の目指すところではない。それよりもむしろ、ブレンターノの判断論や『論理学研究』におけるフッサールの真理論、さらにはカントの真理論・認識論と関係づけることによってこの論争をよりよく理解することに努めたい。
by husserl_studies | 2013-01-20 23:31 | 研究発表要旨
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