本発表の目的は、とりわけ抽象の問題における初期フッサールとヒュームの対立に注目することで、両者の見解を比較的に検討することにある。フッサールとヒュームのあいだの関係が問われるとき、多くの論者はしばしば連合理論に目を向けてきた。たしかに、連合理論は後期フッサールの思索に影響を与えたという点で重要であり、ヒュームとの関係を明確化するのに有益なものであろう。しかし、本発表では、連合理論ではなく意味に関する抽象理論に目を向けることによって、初期フッサールとヒュームの見解を比較的に検討したい。
周知のように、フッサールは『論理学研究』第二研究において、イデア的対象としての意味の擁護を試み、イギリス経験論の抽象理論を批判している。だが、フッサールの抽象理論批判は、しばしば従来の抽象理論の代案を提示したものとして誤解されてきたこともあり、その内実が十分に理解されているとは言いがたい。また、ヒュームの抽象理論も、記号や範例との連合にもとづく代理説として一面的に理解されてきたために、その眼目が見失われてきた。そのため、抽象の問題における両者の見解を正確に比較するためには、まずもって両者の見解をできるだけ彼らの議論に忠実な仕方で再構成する必要がある。 以上のことをふまえ、本発表では、初期フッサールとヒュームが抽象の問題において意味という概念をどのように考えるべきか、という点で対立しているということを明らかにする。そのためにまず、『論理学研究』第二研究におけるフッサールの抽象理論批判の内実を明らかにしたのち、『人間本性論』におけるヒュームの抽象理論を再構成する。そして最後に、抽象の問題における意味の概念について、両者の見解が志向性と因果性のどちらを足がかりにして考察すべきなのかという点で対立していることを述べて論を終える。
by husserl_studies
| 2011-01-24 16:44
| 研究発表要旨
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フッサール研究会
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