ヴィンデルバントの論理学は、従来では主に(否定)判断論の文脈において言及されてきた。またその際にも、彼の判断論は過ぎ去った判断論の歴史の一時期を代表するものとみなされる場合がほとんどであり、独立した研究の対象とはなっていない。しかし近年では、ヴィンデルバントの論理学の現代的意義を問う試みが少数ではあるがなされている。たとえばW. シュテルツナーとL. クライザーは、ヴィンデルバント論理学の形式化・体系化を試みている。またG・ガブリエルは、肯定・否定とならぶ第三の判断としての「批判的中立(kritische Indifferenz)」や「決定不能性(Unentscheidbarkeit)」といった概念に着目しつつ、ヴィンデルバントは3値論理への方向性を指し示したのだと述べている。
しかしガブリエルの解釈に対してはただちに疑念が生ずる。ヴィンデルバントの論理学においてそもそも真理値の担い手となるものは何であるのか。また「決定不能性」とはいったいいかなるレベルにおける現象であるのか。こういったことをまったく明らかにしないままに上のような解釈を提示してもそれは虚しいのではないか。 本発表において私は、ガブリエルによる解釈の批判的検討を試みる。まず、ガブリエルの議論を概観する(第一節)。次いで、ヴィンデルバントは「論理学原理」(1912年)においてフッサールやラスクからの影響のもとに論理学の「規範的」側面と「客観的」側面を区別しているということを確認し(第二節)、矛盾律・排中律・充足理由律といった原理がそれぞれの側面においてどのように機能すべきであるとされているのかを見る(第三節)。さらに、「批判的中立」はあくまで肯定ないし否定のための根拠の不在による判断の保留であるということ、「決定不能性」とはすなわち判断を下す権利がないことであるということ、客観的な思考内容のレベルでは2値原理が採られているということが論じられ(第四節)、さいごにガブリエルによる解釈に対し否定的な評価が下される(第五節)。
by husserl_studies
| 2011-01-24 16:40
| 研究発表要旨
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